2017クラシック馬のプロフィール(3)

フランスのギニーが終わったばかりですが、5月と6月は毎週のようにクラシック・レースが並びます。一息入れている余裕はないので、直ぐに仏1000ギニー勝馬の血統紹介に入りましょう。
今年のプール・デッセ・デ・プーリッシュを制したのはプレシューズ Precieuse 、父タマユズ Tamayuz 、母ズット・アロール Zut Alors 、母の父ピヴォタル Pivotal という血統です。

父タマユズは余り聞き慣れない種馬だと思いますが、現役時代はフレディー・ヘッド師が調教師、7戦5勝。無敗で仏2000ギニーのトライアルであるフォンテンブロー賞(GⅢ)を制してプール・デッセに臨みましたが、9着敗退。
それに続いてジャン・プラ賞(GⅠ)とジャック・ル・マロワ賞(GⅠ)に連勝し、3歳シーズンの最後となったクィーン・エリザベス2世ステークス(GⅠ)で4着となり、そのまま種牡馬として引退したマイラーです。
種牡馬としてはスプリンターの産駒が多く、これまでヨーロッパでG戦に勝った馬は7ハロンが最高。プレシューズは1マイル以上に勝った最初のG戦勝馬で、もちろんクラシック優勝は彼女が最初となりました。

母ズット・アロール(2004年 鹿毛)はロベール・コレ厩舎に所属し、フランスとドイツで走って15戦1勝。勝ったのはデビューの1400メートル戦のみで、2歳時にはミエスク賞(GⅢ)に参戦して3着という結果でした。
翌年は仏1000ギニーにも駒を進めましたが、13頭立ての10着に終わり、その娘が雪辱を果たしたことになります。母馬としての成績は、現在までのところ
2009年 バカラ Baccarat 栗毛 せん 父ダッチ・アート Dutch Art 27戦7勝、勝鞍は6ハロンと7ハロン。5歳時にロイヤル・アスコットの伝統あるハンデ戦ワーキンガム・ステークスに勝ち、その後ゴドルフィンが購入。
2010年 グレー・ブルー Grey Blue 芦毛 せん 父ヴァーグラス Verglas 18戦2勝。1700メートルと、ケンプトンで12ハロンのハンデ戦に勝ち、最後は障害でも競馬して未勝利。
2011年 プテートル Peut Etre 鹿毛 牝 父ホイッパー Whipper フランスで12戦2勝。2000メートル戦で勝った他、トゥールーズのGⅢ戦フィーユ・ド・レール賞で2着。
2014年 プレシューズ

2代母はツァイティング Zeiting (1997年 鹿毛 父ジーテン Zieten)。最初はフランスとアメリカで走り、通算で21戦5勝。娘と同じロベール・コレ師が調教し、2歳時にはメゾン=ラフィットのリステッド戦ゼダーン賞(1200メートル)に勝ちました。彼女も仏1000ギニーに挑戦し、11頭立ての6着。
ツァイティングから3代かけてのクラシック挑戦で、プレシューズが宿願を果たしたと言えるでしょう。

ツァイティングの産駒で主なものを挙げると、
ドイツのGⅡ戦オイロパ・マイルに勝ったコンバット・ゾーン Combat Zone (2006年 鹿毛 せん 父リフューズド・トゥー・ベンド Refused to Bend)、パーク・ステークス(GⅢ)で2着し、UAEオークスでも2着に入ったビキニ・ベイブ Bikini Babe (2007年 鹿毛 牝 父モンジュー Montjeu)、
ジェフリー・フリーア・ステークス(GⅢ)に勝ったロイヤル・エンパイア Royal Empire (2009年 鹿毛 牡 父テオフィロ Teofilo)、ストレンソール・ステークス(GⅢ)勝馬で、豪州に遠征してコーフィールド・カップ(GⅠ)で2着したスコティッシュ Scottish (2012年 鹿毛 せん 父テオフィロ)などが目に付きます。
短距離系というよりは、スピードのある長距離系の実績と言えそうです。

3代母ベル・ド・カディス Belle de Cadix (1992年 鹿毛 父ロウ・ソサエティー Law Society)も9戦1勝ながら勝馬で、ツァイティングの他には、2歳時にボア賞(GⅢ)に勝ってロベール・パパン賞(GⅡ)でも3着したスプリンターのドールド・アップ Dolled Up がおり、
その娘マダニー Madany の牡駒マサート Massaat はデューハースト・ステークスで2着となり、去年の2000ギニーでガリレオ・ゴールド Galileo Gold の2着したことは記憶に新しい所。続くダービーは9着とスタミナ不足が明らかになりましたが、少なくとも1マイルまでは問題なく克服した血脈でもあります。

どんどん進んで4代母グルガンディーヌ Gourgandine (1986年 鹿毛 父オークション・リング Auction Ring)は1戦して未勝利。
母としてはヨーロッパではなくインドで子孫を反映させ、カルカッタ・ゴールド・カップ(インドのGⅡ)に勝ったアヴァランシェ・スター Avalanche Star 、ヒンズー・ダービー(インドのGⅠ)の覇者パーシーヴド・ヴァリュー Percieved Value が出ていますが、何分にもインド競馬には疎いため、最近の活躍馬までは手が回りませんでした。

5代母は、ロイヤル・アスコットのリブルスデール・ステークス(GⅡ)で2着したことのあるノース・フォーランド North Forland (1977年 栗毛 父ノースフィールズ Northfields)。
グルガンディーヌの半姉リベルティーヌ Libertine も仏1000ギニーに挑んで3着、当時はローテーション的に充分余裕があったサン=タラリ賞でも4着に入っており、イタリアでフェデリコ・テシオ賞(GⅡ)に勝ってもいます。

同じく半姉ハームレス・アルバトロス Harmless Albatross はシェーヌ賞(GⅢ)に勝ち、マルセル・ブーサック賞(GⅠ)は3着になった馬で、その仔ヴォロシーン Volochine はアメリカでバーナード・バルーク・ハンデ(GⅡ)に勝ちました。
またグルガンディーヌの半弟に当たるフォーチュンズ・フィール Fortune’s Wheel も古馬になって活躍し、エクスバリー賞(GⅢ)とダルクール賞(GⅡ)に優勝。

更にその上、6代母グリーンバック Greenback (1967年 鹿毛 父フリック Fric)まで遡ると、ノース・フォーランドの半姉インフラ・グリーン Infra Green に行き当たります。
インフラ・グリーンこそプレシューズのファミリーを遡って初めて登場してくるGⅠ馬で、彼女はガネー賞(GⅠ)とジャン・ロマネ賞(現在はGⅠ、当時はGⅡ)に勝った名牝で、産駒にもクイーンズ・ヴァーズ(GⅢ)勝馬でイタリア・ダービー4着のインフラソニック Infrasonic 、センド・ジェームス・パレス・ステークス2着でインドで種牡馬となったグリーンスミス Greensmith 、長距離G戦のベルトー賞(GⅢ)勝馬エコロジスト Ecologist があります。
またインフラ・グリーンの娘グリーン・ロック Green Rock は、1991年のセントレジャー馬トゥーロン Toulon を出し、ここまでくると長距離ファミリーと断定しても良さそうですね。

以上、プレシューズは仏1000ギニーの前までは1200メートル以上の距離を経験していませんでしたが、その牝系は必ずしもスピード優先とも言えず、この辺りの背景が陣営をして1600メートルのクラシックに挑戦させた理由ではないでしょうか。出否は未定ながら、仏オークス参戦の可能性も楽しみです。

ファミリー・ナンバーは3-c。1822年生まれのホイスカー・メア Whisker Mare を基礎とする牝系です。

 

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください